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講演会「映画『斧は忘れても』をとおしてみる多民族国家マレーシア」

盛田 茂 (立教大学アジア地域研究所特任研究員/ 映画『斧は忘れても』字幕制作者)

 2022年6月1日水曜日10:30より盛田茂氏(立教大学)による講演が開催された。マレーシアを舞台としたドキュメンタリー映画『斧は忘れても木は覚えている』(ラウ・ケクフアット監督/2019年/制作国/台湾)に関わる講演であった。本作品を日本で上映するにあたり、日本語字幕を作成した盛田氏に本作品をめぐる諸問題について講演をお願いした。参加者はすでにこの講演以前に視聴していることを前提としたうえで、映像のなかで取り上げている課題や歴史的背景およびこれまで盛田氏がラウ監督と行ったインタビューをとおして作品のなかにみることのできる諸問題について、以下のような側面から議論が展開された。マイノリティ問題、エスニック・グループ間の対立感情、開発問題、クオータ制といったようなある種のアファーマティブ・アクションをめぐる議論、メリトクラシー(能力主義)、植民地主義、だれがブミプトラなのか、なぜブミプトラ内部の詳細な多様性を政策上は捨象するのか、人口問題などといった点であった。

 映像は1969年のマレー人と華人の間でおこった民族暴動「513事件」を中心とした展開であったが、本講演では多民族社会の基盤が成立した歴史的な経緯を視野にいれつつ、この問題が今日に至るまで敏感な問題として公的に言及できない事情についてさまざまな側面から検討が行われた。複数文化の共存が単に理念だけでは実現できない問題であることや、マレーシアがこの問題をトラウマとして抱えている事態について考える必要があることが明らかになった。また周辺国で同様にイスラームを信奉する人が比較的多いインドネシアの場合との違いや隣国シンガポールとの比較なども今回のドキュメンタリー映画を理解するうえで有効になってくるという点については、講演後のディスカッションで議論することができた。講演が約70分、のこりの時間で司会・福浦とのディスカッションを実施した。マレーシアを多様な側面から理解するために非常に有益な機会となったことをここに記しておきたい。(福浦 厚子)

講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子