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信念の認知地図理論とコネクショニズム

教授 西村 正秀

 本研究では、イギリスのウォーリック大学に客員研究員として在籍し、エピソード記憶の表象内容のモデル化を試みた。本研究は、当初は「信念の認知地図理論とコネクショニズム」というタイトルのもとで、エピソード記憶で用いられる認知地図とコネクショニズムの関係を考察する予定であった。エピソード記憶については、コネクショニズムを援用する形で説明する理論が現在有力な理論の一つとなっている。また、認知地図の形成とエピソード記憶の形成にはともに海馬が主たる役割を果たしており、両者の統一的な理解も進められている。そこで、エピソード記憶に焦点を合わせて認知地図とコネクショニズムの関係を精査し、その結果を信念体系の理解と接続しようと考えていた。しかし、研究を進める上で、エピソード記憶には人間特有の現象学的性質があり、それを取り込むような形でのモデル化が必要であることが分かった。ここで、人間特有の現象学的性質とは、E. Tulvingが指摘したself-involvingな性質とmental time travelに関する性質のことである。そこで、エピソード記憶の表象内容を、中心化された可能世界的内容という道具立てを用いてモデル化し、それと信念内容や知覚内容との違いを論じた。この研究は、同大学の記憶の哲学の専門家であるC. Hoerl教授との研究打ち合わせを通じて進められ、研究成果は2026年3月11日に同大学のWMA(Warwick Mind and Action Research Centre)セミナーにおける口頭発表という形で発表された。研究内容の詳細については、今後修正を加えた上で学会等において発表し、その後に論文化する予定である。
 また、上記が主たる研究内容であったが、それ以外には、昨年度「名古屋哲学フォーラム」で発表した「深層ニューラル・ネットワークと概念所有:Sheaの議論の批判的検討」を、その問題点の修正も含めて再検討した。深層ニューラル・ネットワークは現在のコネクショニズムであり、旧来のコネクショニズムに指摘されてきた「思考の体系性を十分に説明できない」という批判を乗り越えることができるのかという問題を立てることができる。今回は、この問題に対して肯定的に解答する哲学者としてR. Millièreが挙げられることを明確化し、彼が援用するN. SheaによるEpisodic Deep Reinforcement Leaning Modelに関する考察がMillièreの主張を十分に支持するのかという形にこれまで進めてきた考察を再定式化した。この研究の一部は同大学のS. Buttefil教授が主催する研究セミナーで発表した。また、最終的な成果は、「深層ニューラル・ネットワークと概念所有:エピソード記憶を用いた深層強化学習モデルに焦点を合わせて」というタイトルで論文化し、『彦根論叢』448号に投稿した。    

結果発表

  1.結果発表の時期:今年度に内容を修正したものを学会で発表したのちに、論文化してジャーナルに投稿したい。
  2.結果発表の方法:最終的には論文化して査読付きの専門ジャーナルに投稿する。


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